廃道・廃線レポート ~国道145号旧道・吾妻線旧線区間 [9]~
旧道を下る
さあ, 現在地は
画面中央, 吾妻川に流れ込む小川のそばだ. 地図に道は描いてないが, 左に曲がると例のチキリトンネルに裸の鉄橋がいる. なんと, 前回の「第一小学校入口」から300mしか離れていない.
とりあえず旧道を行こう. といっても, じつは左右がかなり高い蔦なので, 普通の山道とそん色ない部分が多かった. 道が少し汚いくらい. 時々景色が開けたときに川の方を見てみると, 整地された川岸が見え隠れする.
こんな風に一見寂びれた山道だろ? というような風景でも,
この写真では伝わりきらないが, ふと橋から見える景色を覗くと, なんとも無機質な風景が目に入る. ちなみに, 橋の向こうは行けていないのである.
ブログ書くのは他人に伝えられるという点でも意義あると思って書いているが, 自分に対してのフィードバックが, ここんとこ探索不足一点張りでなんだか.
自転車で旧道を下っていく様子は動画に収めてあるため, ここには上げられない.
Youtubeに投稿してリンク貼ればいいんだけど, 軽く編集しなきゃだし, さすがにめんどい.
もう少し進むとトンネルが見えてきた. この風景すごく好きかもしれないんだけど, 「かなりの勾配で下った先にトンネルがある」という状況に少し違和感を感じる. むしろそこが気に入っているのかもしれないけど, こういう道に現れるトンネルの場合, いわゆる山岳トンネルのように大きな山を貫通させているわけでもなく, 短く一方的に下っている状況なので, 排水をそこまで気にしなくてもいいからだろう. トンネル手前左の落石防止ネットがさび付いてしまっている. ダムに水がたまるのと, ネットが破れてしまうのはどちらが先だろうか.
ストリートビューの景色が気になったので見てみることにした.
今更になって気づいたのだが, 路面に描かれた道路標識類ははがされているのだろうか? それとも, 自然と朽ちていっているのだろうか?
白線や黄線の塗り替えがどのくらいの頻度でなされているのかを調べてみたところ, 状況にもよるが, 交通量が多いと3年ほど, 交通量が少なければ10年は保つそうだ. この道はもうそろそろ廃後6年目を迎え, その間は工事用の大きなトラックが出入りしていることから, こうなるのは自然なのだろうか.
横断歩道があったのか. これもまたすっかり消されていて写真を振り返るまで気付かなかった.
振り返って写真を撮ったようだ. 不動大橋が随分と遠くに見えている.
トンネルを抜けてしばらくすると, 緩い坂を上る. そこに見える景色は, 本来であれば
こんな景色だったり
こんな景色だったりしたらしいのだが, 僕らが目にしたものは
こんな景色だった. なかなかエゲツいことするなぁ…という印象.
1枚目, どこかにカモシカが映っています. 30秒くらい目が合ってたんだけど, カメラを構えようとしたら逃げてしまい, 慌てて連射した中のひとつだ.
カモシカは日本では主にニホンカモシカのことを指し, これは特別天然記念物である. かといって絶滅が心配されているわけではないが, こういう形で目にしたことはうれしかった.
ちなみに, 道路そのものもアスファルトははがされており, 1枚目の水のたまったところは, ストリートビューで見たら盛り上がって木が生えている部分だ.
廃廃廃
しばらくするとアスファルトは復活し,
奥にまた橋が見えるようになる. これこそが八ッ場大橋である. これをストリートビューで見ると,
このとおり, 奥にはまだ橋脚しか建設されていないところを見ることができる!
この撮影は2012年8月に行われたものらしい. 導入で話したように, 八ッ場ダム周辺の工事は自民党が推進したものだが, 野党から多くの批判を受け, また2009年の民主党への政権交代時に, 八ッ場ダム工事の是非を投げかける場面で, この橋脚(当時は湖面1号橋という仮称だった)が映し出されるところをテレビで見ている方は多いはずだ. ただ, この橋自体は県道377号の整備の一環として, ダムとは別に2010年3月に工事の続行を決定している. にしても2012年8月でこれって工事遅くないか?
そしてまたしばらく行くと,
このような交差点(?)に出る.
この写真は上のストビュ―から見て左の道から交差点を望んで撮ったものだ.
道路中央のオレンジのガイドポストとガードレール, プリンカーライト, 他標識類はすべて撤去されている. この背後には
あらら, 勾配的に水没してしまうようだ. 残念ながら電車に乗らなくてはいけないので, ここに足を突っ込むことはできなかった. 車で水没隧道を訪れたときはよろこんで真冬の水に腿まで浸かったんだけども. ん~…ここも再訪したいな.
…僕見たもの少なすぎでは? 同じ漫画を何度も読む人間です.
こういう道だったらしい. 泥濘がない分すごくきれい.
では, この道をまっすぐ進んでみよう.
ここは廃橋である. その奥は廃橋がある. その奥には鉄道の廃橋がある. そしてその奥には八ッ場大橋である. そしてそのさらに奥には, クレーン, そしてうっすらとではあるが, 八ッ場ダムの堤が見える. 綺麗だ. ではその「奥の廃橋」に行ってみよう.
先ほどいた道を撮る.
どうやら橋の構造が異なっている. 向こうの橋はプレートガーダーなのに対し, 今いる橋は上路アーチである. 竣工年が違うのだろうか? ちなみに, この道路の構造は
https://www.google.co.jp/maps/@36.5522691,138.7032219,18z?hl=ja
このようになっている. それぞれの橋で片側通行させているのだ.
右側の県道377号, 川原畑大江戸線が八ッ場大橋である.
橋がたくさんある方向を向くとこんな感じだ. この廃線の鉄橋はトラス橋(トラスは三角形の意)の中でも垂直材が入ったワーレントラスというものだ.
ではストリートビューでもう少し見てみよう.
こちらも橋は橋脚のみの建設である上に, ガードレールがすごくきれい!
というのはおそらく工事用車両の出入りにより, どうしても土っぽくなってしまうのだろう. よく見ると, 汚いとはいえ錆びてはいないのだ.
カーブのところはこのようになっている.
少し汚くなったとはいえ, 現役時代と遜色ないことがわかるだろう.
そして気になるのは…鉄道の廃橋は? 行かないの?
ええ, 行きましたよ.
ここ上ったんですけどね. 桁下は大体2mくらいだろうか. なんとか桁を掴んで登った.
登る直前, 先ほど渡った橋の対岸にまたしてもカモシカを見つけた. こちらをじっと見ていたが, カメラを構える前に逃げられてしまった. 先ほど出会ったカモシカと同じカモシカだろうか? 興味を持ってついてきてくれたのなら少しうれしい.
ストビュー的にはこの奥である.
さぁ! 望む!
まあまあまずは反対側を…
バラストがこんなにも残っているのに下草が. 生命力を感じる.
おぉ!!!!!!
この高さがわかるだろうか, そして, 八ッ場大橋から丸見えなのがわかるだろうか…
そしてダムも見えている…, あらゆる方向から裸を見られる思いである.
右側に管理用歩道があるが, さすがに人目に触れたらまずいので渡橋は控えた.
というのも, 先ほどの廃橋三昧も含め, この辺りの景色は, やんば見放台から八ッ場大橋を望んだ時に必ず目に入ってしまうポイントなのである. 道路橋くらいなら大丈夫だろうが, さすがにこんなスカスカな廃橋を渡ってはあらぬ誤解を招いてしまうこと間違いなしだ.
ここに路盤と橋との隙間がある. しばらく橋側に立ったが, さすがに怖すぎる. 構造が崩壊する心配はないものの, 急にこの谷部に風でも吹いたら落っこちちゃうんじゃないかという恐怖だ.
少しだけ道路橋が覗ける.
こんなところに何分も滞在しては心臓に悪い. そそくさと退散だ.
先ほどカモシカがいたほうへ再び自転車を漕ぎ出す.
ダム要塞
来た道を振り返る. 舗装が途切れてしまった. ここがどんな風景だったのかというと,
こんな風景であった. 目に見えて景色が荒れたのがわかるだろう. なぜか, というのも
現れた…, あれが八ッ場ダム.
この写真が如何に貴重かわかるだろうか?
こちらはダムの上流側である.
ここには水がたまるのである.
橋脚にはまだ水位があることを示すような汚れもない.
半永久的に見ることのできない景色, 立つことのできない地である.
確かにダムによって失われた自然を嘆きたくなるのはわかるが, ここから先はそれ以上にダムという巨大な構造物に圧倒されることになった.
ちなみにここには本来旧国道が続いていたはずで, 同様に吾妻線も走っていたはずだ.
ストリートビューで見てみよう.
橋も架かっていなければ, ダムもない. 本来ダムがある場所から見える奥山が美しい.
そして隣に寄り添うように吾妻線が走っていた.
看板からわかるように, この辺りこそが旧川原湯温泉駅周辺である.
こんな景色だったらしいが…, 先ほどの写真をもう一度.
何も残ってはいなかった.
ところで, この八ッ場大橋の左側, 道路から何か垂れているのが見えるだろう.
この景色を見たとき, 突然ここから人がぶら下がっているのを目にし, まさかレスキューでも出てしまったのかと至極不安になったが, ばかばかしくも杞憂に終わる.
http://www.bungyjapan.com/yamba/
そう, ダム湖ができる直前の今年まで, バンジージャンプを営業しているのだ.
は? 20,000? 誰も払わねえよ. と思うが, 結構な人が飛んでいた. 106mと, 一時的に日本一高いらしいので, 20,000円をドブダム湖に捨てたい人は行ってみよう.
ダムに行く直前で今回は終わりたいと思う.
次回こそ,
いざ踏破!!!!!!